高年齢労働者の労働災害防止対策努力義務化に向けてーエイジアクション100を使い効果的な作業帽子を選ぶ方法とはー

日本では少子高齢化が進行しています。労働現場においても働き手の減少という問題は大きく、今まで以上に多様な人材が安心・安全に働き続けることが出来る職場環境が重要になります。
そのための取組みの一つが、定年の延長や雇用機会の提供でした。2025年10月現在、事業者は雇用を希望する65歳までの労働者」に対する雇用機会を提供する義務があります。これにより、ある意味年齢にとらわれず、希望する人は働き続けることができる環境は整いつつあります。
ただ一方で、高齢になるほど体力が低下することは否めません。労働災害の統計では、休業4日以上の死傷者数が近年増加傾向にあり、要因のひとつに高年齢労働者の労働災害の増加が挙げられています。
この記事では、高年齢労働者の労働災害防止につなげるため、どのような対策が考えられるのか、そのための作業帽子の効果的な活用方法についてご紹介していきます。

目次:
1.なぜ今「高年齢労働者の安全対策」が重要になるのか
2.エイジアクション100とは?
3.作業帽子が高年齢労働者の安全に果たす役割
4.エイジアクション100×作業帽子選び―実践的なチェックポイント
5.まとめ

1.なぜ今「高年齢労働者の安全対策」が重要になるのか

ご存じでしょうか?労働安全衛生法の改正により、令和8年(2026年)4月1日より、「高年齢労働者の労働災害防止に必要な措置の実施」が事業者の努力義務となります。

参考・引用:厚生労働省ホームページより
労働安全衛生法の改正について – 厚生労働省|厚生労働省

上記より改正内容をご紹介します。

〇高年齢労働者の労働災害の防止を図るため、高年齢労働者の特性に配慮した作業環境の改善、作業管理その他の必要な措置を講ずることを事業者の努力義務とする。
〇厚生労働大臣は、事業者による措置の適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を定め、当該指針に従い、事業者又はその団体に対して必要な指導、援助等を行うことができるものとする。

この改正の背景にあるものとして、
●休業4日以上の死傷者数は近年増加傾向にあり、この要因として、高年齢労働者の労働災害の増加が挙げられる
●高年齢労働者は、他の世代に比べて、労働災害の発生率が高く、災害が起きた際の休業期間が長い
ことが掲載されています。

※ここでいう高年齢労働者ですが、何歳くらいをイメージされますか?
上記の厚生労働省ホームページでは、おおよそ60歳以上を指しているようですが、後でご紹介するエイジアクション100においては、50歳以上の労働者を「高年齢労働者」と表現しています。
(筆者は2025年10月現在で40歳代後半となりますが、50歳も近づいています。自分が高年齢と呼ばれる年代になることに現状では違和感がありますが、20歳代のころと比べると体力低下は顕著ですし、自分が高年齢になりつつあるということを意識していかなければいけない、とこの記事を書くことで感じております。)

2025年10月現在、厚生労働大臣による指針は出されておりませんが、2026年4月1日より始まる「高年齢労働者の労働災害防止に必要な措置の実施」の努力義務化に向けて、各事業者は準備を進めていく必要があります。

ただしこれは法律順守という観点だけでなく、これからの事業環境の構築のために重要なポイントとなります。
少子高齢化が進行することで、新たな人材の確保はますます難しくなります。今働く現役世代、そして長く現場を支えてもらっているベテラン世代の方たちが、安心・安全に働くことができ、労働災害ゼロとなるような環境を構築していかなければ、事業継続が困難になることも考えられます。

労働安全衛生法の改正、そして、未来への備えとして、今、「高年齢労働者の安全対策」が重要となり、注目されています。

2.エイジアクション100とは?

年齢労働者の安全と健康確保のために参考となる情報として、「エイジアクション100」というものがあります。
こちらは、2018年6月に中央労働災害防止協会が発表したもので下記の6つが含まれています。

●高年齢労働者の安全と健康確保のためのチェックリスト
●高年齢労働者の安全と健康確保のためのチェックリストの解説
●高年齢労働者の労働災害の発生状況
●加齢に伴う身体・精神機能の状況
●高年齢労働者の安全と健康確保のための職場改善計画
●高年齢労働者の安全と健康確保に役立つパンフレット等のリスト

参考・引用:厚生労働省ホームページ
エイジアクション100~ 生涯現役社会の実現につながる高年齢労働者の安全と健康確保のための職場改善に向けて ~ |厚生労働省

こちらを活用することで、現在の職場における「高年齢労働者の安全対策」で何が不足しているのか、どのように対策していけばいいのか、をチェックできます。

とくに、「高年齢労働者の安全と健康確保のためのチェックリスト」は100項目からなるチェックリストで、こちらのツールを活用することで職場のリスクを見える化し、改善につなげることができます。

令和5年(2024年)確定値の、「労働者死傷病報告」による死傷災害発生状況を調べてみました。
職場のあんぜんサイト:労働災害統計

合計135,371件発生していますが、
年齢別での発生割合は下記でした。

年齢層割合 ※小数点第三位以下切り捨て
~19歳1.83%
20歳~29歳12.07%
30歳~39歳12.13%
40歳~49歳18.27%
50歳~59歳26.34%
60歳~69歳20.50%
70歳~74歳5.97%
75歳2.84%

次に、事故型による発生割合は下記でした。

事故型割合 ※小数点第三位以下切り捨て
墜落・転落15.33%
転倒26.63%
激突5.11%
飛来・落下4.32%
崩壊・倒壊1.47%
激突され4.29%
はさまれ・巻き込まれ10.28%
切れ・こすれ5.61%
踏み抜き0.17%
おぼれ0.02%
高温・低温の物との接触2.68%
有害物質との接触0.44%
感電0.07%
爆発0.03%
火災0.03%
交通事故(道路)5.13%
交通事故(その他)0.07%
動作の反動・無理な動作16.29%
その他1.64%
分類不能0.23%

50歳代以上において労働災害の発生件数が多い、そして労働災害における発生原因として転倒が一番多い、
この2つの対策を行うことが、労働災害の減少において重要になる、そのような仮説が導かれます。

3.作業帽子が高年齢労働者の安全に果たす役割

前パートにおいて、「転倒」への対策の必要性について触れました。

※下記記事で、「転倒対策」のために活用できる作業帽子についてご紹介しております。
「転倒=大ケガ」を防ぐ!作業現場で使える”かぶる労災対策”とは?ーヘルメットを被るほどではないけれど頭部保護が必要な現場でー

作業帽子は「頭部を守る道具」になります。ただ作業時間中、例えば1日8時間、ずっとかぶり続けるものとなりますので、働く人の快適さや集中力維持にも直結する重要なアイテムにもなります。

高年齢労働者は加齢に伴い、下記が発生してきます。
●バランス能力の低下
●筋力の低下
●俊敏性の低下
●視認性の低下
●体温調節機能の低下

上記を考えたうえで、作業帽子に下記の観点を加えていくことをお勧めします。

★なるべく軽い作業帽子
少しの重量さが、首や肩の疲れに影響します。負担が少なくなるよう作業帽子の重量に注目してみましょう。

★被って快適な作業帽子
ポイントとなるワードは通気性と吸汗速乾です。高年齢労働者は若年層に比べて熱中症リスクが高くなります。快適な作業帽子に注目してみましょう。

★視界を広く確保できる作業帽子
高年齢労働者は手元、足元への注意が散漫になってしまいます。なるべく視界を広く確保できる作業帽子に注目してみましょう。ポイントとなるワードは庇の長さ、です。

★フィット感のある作業帽子
頭部保護ができる作業帽子をかぶっていても、すぐにズレたり、落ちてしまうようなものだといざというときに頭部を守ることが出来ません。頭部にしっかりフィットする作業帽子に注目してみましょう。

上記の観点を加え、作業帽子選びに一工夫加えることで、高年齢労働者における労災事故の「発生防止」と「被害軽減」の両面から効果が期待できます。

では、ここに先ほどご紹介させていただいたエイジアクション100におけるチェックリストの活用を加えていきます。

4.エイジアクション100×作業帽子選び―実践的なチェックポイント

エイジアクション100
000364583.pdf
(このパートではこちらの資料を引用させていただいております)

このエイジアクション100にある「高年齢労働者の安全と健康確保のためのチェックリスト」は、100のチェック内容が盛り込まれ、事業所における現状を把握した上で、安全(衛生)管理者などがチェックを行う際に使用するツールとして推奨されています。

抜粋:

100のチェック項目について、
チェックリストの解説やその他の参考資料を参照して、下記3段階でチェックをし、結果に記入していきます。
〇:取組を既に行っており現行のままでよい。
×:取組を行っていない、又は行っているがさらに改善が必要。
―:対象業務なし、又は検討の必要なし。

そして、上記で「×」が付いた項目のうち、優先度が高いと考えた場所については、優先度の欄にチェックマークを付しておきます。

結果、「×」+ 優先度チェックがついた項目について、職場改善計画を作成し、安全衛生委員会等において検討を行い、取組を進めていく、そのように活用していきます。

このパートでは、このチェックリストにおいて、作業帽子を活用することで改善できると考えられる項目を取り上げ、実際に活用いただきたいアイテムもご紹介していきます。

チェックリストを確認・作業帽子活用を考える

「高年齢労働者の安全と健康確保のためのチェックリスト」は、大きく分けると9つに分類されています。

1.高年齢労働者の戦力としての活用(チェック項目:1)
2.高年齢労働者の安全衛生の総括管理(チェック項目:2~5)
3.高年齢労働者に多発する労働災害の防止のための対策(チェック項目:6~53)
4.高年齢労働者の作業管理(チェック項目:54~62)
5.高年齢労働者の作業環境管理(チェック項目:63~69)
6.高年齢労働者の健康管理(チェック項目:70~86)
7.高年齢労働者に対する安全衛生教育(チェック項目:87~89)
8.高年齢労働者の勤労条件(チェック項目:90~94)
9.高齢期に健康で安全に働くことができるようにするための若年時からの準備(エイジ・マネジメント)(チェック項目:95~100)

このチェックリストを1項目から見ていき、「×」:取組を行っていない、又は行っているが、さらに該当が必要、となったときに、<作業帽子を活用することで改善できると考えられる項目>を取り上げていきます。
おすすめの作業帽子もご紹介しますので、ぜひ貴社の安全衛生活動での参考にしてください。

■その1
3.高年齢労働者に多発する労働災害の防止のための対策
(1)転倒防止
 ①つまずき、踏み外し、滑りの防止措置
チェック項目7:床面の水たまり、氷、油、粉類等は放置せず、その都度取り除いている


「×」になった場合、行うべきことは、日常の清掃となるかと思いますが、滑りやすい箇所の清掃の場合、<清掃の際の転倒防止対策>も必要になります。
転倒防止対策のための清掃時に転倒してしまっては本末転倒になります。

よって、「清掃作業を行う」という対策に加えて、「清掃作業時に使用する作業帽子」導入の検討もいかがでしょうか?

おすすめの作業帽子は
●【涼】セーフティー~safety~
https://sagyouboushi.com/safety/

●【涼】セーフティーメッシュ
https://sagyouboushi.com/safety-mesh/

です。
こちらは帽子内部にインナーメットを内蔵してありますので、転倒時などに頭を守ってくれて大けがを防ぎます。
頭を守るアイテムというとヘルメットも考えられますが、日常の清掃作業時にヘルメットを被るということはなかなか高いハードルです。それはヘルメットの重量にも原因がありますし、「ヘルメットは高所作業時などに被るもの」という意識も働くからです。
この帽子はヘルメットより大幅に軽く、作業帽子としての使い勝手もよいため、日常使いする作業帽子としても役立ちます。
清掃作業時だけでなく、通常作業時でも被っていただけますので、日々の作業における転倒防止対策にも活用できます。

※合わせて下記記事もお読みください。
「転倒=大ケガ」を防ぐ!作業現場で使える”かぶる労災対策”とは?ーヘルメットを被るほどではないけれど頭部保護が必要な現場でー

■その2
3.高年齢労働者に多発する労働災害の防止のための対策
(6)熱中症予防
 ⑤涼しい服装
チェック項目47:クールジャケット等の透湿性・通気性のよい服を着用させるとともに、直射日光下では、通気性の良い帽子(クールヘルメット等)を着用させている。


通気性の良い帽子、と明言していただいていますが、多くのお客様とお話をしていて、意外に忘れられがちなのが、「頭部を涼しくさせる事の重要性」です。
空調ウェアはじめ、体をまとうユニフォームについては大分「暑さへの対策」が進んでいますが、こと帽子になると、「帽子の暑さ対策・蒸れ対策は難しいよね。我慢しよう」となりがちです。
しかし、本当に仕方ないのでしょうか?

ぜひ作業帽子の変更を検討してください。
安全のために着用している作業帽子が、逆に高年齢労働者の安全を脅かす存在になってしまってはいけません。

作業帽子.comでご紹介している作業帽子【涼】シリーズはすべて、帽子の暑さ対策を考えに考えて開発したものです。
ぜひ貴社の熱中症対策のひとつとして、作業帽子【涼】シリーズをご検討ください。
6つの特徴で、働く方の頭部を涼しく、快適に保ってくれます。

作業帽子【涼】とは
https://sagyouboushi.com/about-ryou/

※合わせて下記記事もお読みください。
夏の現場を快適に!涼しさと通気性で選ぶ作業帽子 メッシュ素材がおすすめ

■その3
5.高年齢労働者の作業環境管理
(2)聴覚環境の整備
チェック項目67:会話を聞き取りやすくなるように工夫するほか、聞き取りが難しい場合には、見て分かる方法(書面、回転灯、タワーランプ等)によっている。


「会話を聞き取りやすくなるように工夫」。この部分に、ぜひ作業帽子の工夫を加えてみてはいかがでしょうか。
個人差はありますが、高年齢になると聴覚機能も低下していきます。また、常に機械が稼働している工場などでは、より人の声が聞き取りづらくなります。

毛髪落下など異物混入を防ぐために、耳まで覆うタイプの帽子を使用していることも多いかと思います。
実際に私たちのお客様からお聞きした声ですが、「耳まで覆う帽子を被っていると人の声が聞き取りづらい」というお悩みがありました。
高年齢労働者の場合は、特にこの課題が重要となります。危険を防ぐための大切な声掛けが届かなくて、大事故につながる、このようなことはあってはなりません。

私たちは毛髪部分を覆いつつ、耳部分はメッシュ構造(2重メッシュで異物落下防止は強化)で「音は聞こえやすく」「締め付け感も低減」した帽子を開発いたしました。

●Newセミフード型作業帽子
https://sagyouboushi.com/new-semi-hood-type/

※下記記事で開発にご協力いただいたお客様の声をお読みいただけます。
大洞印刷株式会社様の声

聴覚環境の整備の一環として、作業帽子への工夫、ぜひ取り入れてみてください。

■その他
3.高年齢労働者に多発する労働災害の防止のための対策
(3)腰痛予防
 ②重量物の取扱い
チェック項目25:重量物を取り扱う場合には、機械(台車・昇降装置・バランサー等)による自動化・省力化、腰痛予防ベルト・アシストスーツ等の活用による負担の軽減を行っている。


ジュトクでは「日本の作業現場を快適に」を掲げ活動しております。作業帽子以外でも、高機能ウェア、アシストスーツのご提案が可能です。ぜひご相談ください。
お問い合わせはこちらからお気軽に。

上記以外にも、皆さまがチェックリストを確認していく中で、「ここは作業帽子が活用できるのでは」という項目がございましたら、ぜひご相談ください。私たちも貴社作業環境に合わせた作業帽子をご提案させていただきます。

実際の選定フロー―失敗しない作業帽子導入法とは

実際に作業帽子を導入していくためのステップとしては下記のようになります。

STEP1:チェックリストを元に現場環境を確認していく(作業内容・作業環境・作業者の確認)
STEP2:エイジアクション100を使用し、対応すべきリスクを洗い出していく
STEP3:対策に必要な機能を備えた作業帽子を選定する
STEP4:作業者に試着してもらい、高齢労働者の意見を取り入れる
STEP5:定期的な見直しを実施する(作業環境は改善したのか・作業帽子に劣化は見られないか、など)

上記で大切なポイントを取り上げますと、
STEP4の「作業者に試着してもらい、高齢労働者の意見を取り入れる」は大変重要です。
選定するうえで、安全衛生委員による検討は行っているとはいえ、大切なのは高齢労働者の感想です。
ぜひ、作業帽子の本格導入の前に、一部作業者から取り入れ、多くの意見を集めてください。
どうしても各個人で差が出てきますが、バランスを取りながら「事業者として許容する全体での効果」を重要視して、進行してください。

また、STEP5の「定期的な見直し」ですが、エイジアクション100においては、6か月~1年くらいのサイクルで継続実施していくことが推奨されています。

ただ、ユニフォームや作業帽子については、外部気温、つまり季節の変化が大きな影響を与えますので、衣替えに合わせた「定期的な見直し」をおすすめします。
気候の変化が激しい昨今、衣替えの時期も変化していますが、一般的には5月・10月あたりに行われることが多いです。こちらに向けて、計画を立てて見直しを実施していきましょう。

5.まとめ

今回の記事では、高年齢労働者の労働災害防止についてご紹介してきました。事業者にとっては、令和8年(2026年)4月1日の努力義務化に向けて、法的な対応も必要とはなりますが、今後の企業活動に向けては取り組まねばならない社会的責任ともいえます。2025年10月現在、厚生労働大臣からの対応指針は出ていませんが、現時点では「エイジアクション100」を用いて、作業現場におけるリスクを可視化していくことが求められます。
ぜひ、頭部保護性能・快適性・作業への配慮も兼ね揃えた作業帽子を調べ、導入を検討してくことで、高年齢労働者だけでなく、全従業員の労働災害の減少、いや、労働災害ゼロを目指してください。
安全で働きやすい職場をつくることは、従業員の健康を守るだけでなく、企業の持続的な成長にも直結します。今こそ、作業帽子を含めた総合的な安全対策を見直すタイミングではないでしょうか?

日本の作業現場を快適にしたい、そうすることで皆さまの課題解決のお役に立ちたい、そんな想いを持ち、作業帽子を制作しております。
お困りごとなどございましたら、ぜひご相談いただければと思います。
お問い合わせはこちらまで。

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